歯科医を変えるべきか国を変えるべきか?

 生産性至上主義の逸脱と歯科の過剰治療

    全てのフランス人に料金で質の高い歯科治療を提供するという野心的試みが失敗に終わることは明らかである。社会的要素を満たすために、医療安全管理を犠牲にした。社会保険は螺旋を描く慢性的赤字により、国民の健康を守るという使命に背を向けざるを得ない状況に追い込まれている。社会保険は運営管理の不備の責任を負うことを拒み、独占利益を貪った咎で歯科医達を糾弾する。方向性は間違っていないと主張する社会保険の行政責任者は、扱いにくい「自由診療医」達をより厳しく枠にはめ込むことが解決策になると考えている。厚生大臣は歯科のミクロ経済に関する自身の知識不足を、この分野の新参者である経済大臣に打ち明けた。

破綻を避ける二通りの戦略:

  • 治療の最適化と予防により、治療行為の量に干渉する。これは歯科予算を抑えつつ質の高い治療を提供する、北欧諸国やスイス、カナダなどの国が採った選択である。
  • 自由診療の歯科医の料金設定に強制的圧力をかけることで治療費に干渉する。これはフランスが採った選択で、以降ヨーロッパで最も歯科治療費の安い国になったにも関わらず、治療の量を減らす代りに更に治療費を下げようとしている。酔えれば酒の種類は問わないというわけである!

  1975年以降、社会保険の医療部門は歯科医達に診療報酬の減額と交換に社会的恩恵を提案してきた。国民のための低料金の歯科治療と、歯科医のための自由価格補填物の浅ましい交換取引は、大臣、医療保険、そして歯科医師会と関係の深い主な共済組合により支持されている。この交換取引のために過度に安い料金で大量の治療をこなすことを余儀なくされている歯科医達は、生産性至上主義に身を委ねて不当な補填治療を行う以外に、利潤を引き出す方法を持たない。診療報酬と補填物の値段に著しい不均衡を生み出したことで、ずさんな治療しかできなくなる一方、機能的・審美的処置はトゥーレーヌ厚生大臣を悩ませる実入りの良い商売となった。

    治療という名の重労働に時間の3分の2を捧げねばならない状況の中、補填物という小さな土地が、歯科医達に生計を立てられる希望をもたらした。ところが補填物に耐久性を持たせるためには健全な土台が必要であり、これを急いで処置した場合には欠陥が残る。保健当局の統計によると、抜髄された歯の34%に感染がみつかっている。つまり年間250万本である!汚染されたままクラウンを被せられたこれらの歯にかかった費用は年間22億ユーロで、その再治療には60億ユーロ以上かかる。

  歯髄の浸食という過剰診断は、我々の『社会保障』制度の頽廃から生じた病である。フランスでは年間750万本の歯が抜髄されている。これに対しフランスの5倍の人口を擁する米国では年間1500万本である。我が国の共済組合とその相方である社会保険が望む交換取り引きの中に腐敗を生む何かがあると考える以外に、報酬額の低い治療の大量生産をどう説明できるだろう。抜髄のうちの3分の2はクラウンの売上が増えるという理由の他には根拠を持たないのであろうか。

     極端に安い料金設定が医療保険の財源を枯渇させる生産性至上主義の原因であるから、補填物の値段を強制的に下げるというマクロン氏の決定は、治療の過剰生産という自然な反動を拡大することにしかならず、より多くの不要な補填治療、従って容認できない健康な歯の毀損を更に助長することになるであろう。国はニーロップ医師の行為を支持するつもりであろうか。共済組合は、抜髄した歯にはクラウンを被せなければならないとしている。この思考は21世紀の科学的文脈の中ではすでに時代遅れであるが、代替治療は払い戻しの対象とならない。事態をより悪くしているのは、抜髄された歯の42%がインレー・コア (歯根に埋め込む鋳造された金属支柱) で再構築されることになるが、社会保険が2004年以降これを不要であるとし、歯根にとって危険であると同時に財政的に高くつくと言い出したことである。これらのインレー・コアの75%が、適切ではなく科学的データに適合していないとされている。それにも関わらず医療保険から毎年何百万件もの払い戻しがなされている。この新しい治療行為は (歯科医達にとって) 真の社会的進歩と考えられていたと言わねばならない。交渉者達の間に暗黙の了解があることは明らかである。

   このあまりにも低い料金で普通の虫歯を治そうとするなら、過剰治療は避けられない。抜髄の正しい処置のために支払われる41ユーロは1時間分の仕事に対するものであるが、診療所が定める料金は大抵この2倍である。このことが2時間で仕上げて900ユーロの請求となるお決まりの3点セット (抜髄、インレー・コア、クラウン)の魅力を説明している。

    このような制度が持続性のあるものではないことを理解した歯科医は、市民の健康にとってより必要性の低い専門分野 (インプラントや審美歯科) を志向するか、あるいは社会保険の料金規定と職業倫理規定から解放されることでこれを回避することを選ぶ。

   『自由診療』の歯科医は全員、フランスが強要するこの制度に縛られている。 彼らの腐敗の度合いは様々である。ある者達は患者がコミュニティーに隠れて診療費を支払うのを助けることで『利他主義』に基づく不正を行う。制度の寛容主義を故意に乱用する者もいる。大規模な歯科医療詐欺の有名な例が、シャトー・シノンだけではなく、パリの歯科センターでも発覚しているが、国や歯科監査機関が反応を示さないことから、歯科医師会も社会保険も民間保険会社も司法も、従って社会もこれらの事件に相応の重要性を与えることを望んでいないことが分かる。歯科業界のスキャンダルの恐れに直面したフレデリック・ヴァン・ロークゲムは公職を退いて民間へと逃避した。マリソル・ トゥーレーヌはより多くの社会保険を要求することで、安全衛生管理という問題から逃れた。ヴァン・ニーロップ医師が健康な歯を抜くのを阻止しなかったとして非難されたクリスチャン・クジヌーは『欧州』にこの問題を丸投げした。ニエヴル歯科医師会の会員達は、シャトー・シノンの患者に対する支配的立場に居座るために、引き継いでゆく歯抜き師達の上を猛禽類のように旋回している。オルメタ (沈黙の掟) は社会保険または職業協会という名のフランス的思考の聖域を守る掟である。犠牲となった患者達は、連帯が価値ではなく単に口実であることをエゴイズムが証明しているような社会から無視され、打ち捨てられる。個人的苦痛を前にした集団的事なかれ主義には、己を正当化するためのスケープゴートが必要となる。公的権力とメディアによって組織的に行われる『歯科医叩き』は、社会にとって自らの過ちを告白するよりも痛みが少ない。犠牲者を支持するために立ち上がる歯科医がほとんどいないのは、『職業倫理』に外れた場合には処罰を辞さない歯科医師会により、同業者の連帯が命じられているからである。もしも透明性が許されるなら、もしも道義心のある保険業者が腐敗を糾弾するなら、もしも主役の座を取り戻した患者達が再び歯科医師会の関心の的となるなら、倫理から一時的に遠ざかっているヒューマニストと出世主義の詐欺師を識別できるかもしれないが、平等性を追求しすぎるが故に、犯人と被害者を取り違えることになる。独断的な国家的統一のオルメタが、善悪の区別を禁じているからである。

     フランスの法律では、自由診療医は皆、自らの医療行為の全責任を負う。公立病院ではその管理体系のみが責められるので、勤務医が責任を問われることはない。マリソル・ トゥーレーヌが我々に自由診療医から協定医に移行したことを思い出させるのであれば、需要独占する社会保険により出資される我々の医療行為の責任をその監督省庁に保証させるべきではないだろうか。確認されているこれらの逸脱は管轄違いの管理が原因ではないだろうか。7年以上前に高等保健機構が指摘し、社会保険や共済組合に報告した数え切れないほどの職業的不正行為の後始末を誰がするのだろう。市民の連帯の名において負債の請求書を患者に突きつけるべきだろうか、それとも社会保険の底なしの井戸に捨てるべきだろうか。

     国民のために採られたこの誤った政治的選択は、社会保険と歯科監査機関に公益を守るという使命の深刻な欠如を生み出した。患者と医者に信条の自由を取り戻させるには根本的な改革が必要となるが、多数派の組合は自分達を保護するパラダイムを転覆させる可能性のある一切の進化を拒否している。歯科医師会はその権力の源となっているこれらの組合を支持している。競争庁は、マクロン氏が共犯者となったこれらの暗黙の了解について通報させるべきである。

    患者の安全を確立するために、歯科医療は自律性を回復し、自由診療医に自由裁量を与えるべきである。医師のセクター2のように公正な競争を受け入れる民間セクターを設けることで、国が禁じる質の高い治療を患者に提供できるようになるだろう。国は浪費されている金額と承認できない類の福祉に費やされている金額を再配分することで実現可能になる、国民の健康を守るという高邁な使命を再定義すべきである。歯科医療に毎年浪費されている金額は、フランスの治安維持費の半分以上に相当する!

    フランス人達が望んでいる生き方の選択と安全の選択を、いつまで禁じ続けられるものだろうか

   ジャン=ジャック・デュピュイ (Jean-Jacques DUPUIS)

dds@paneuropean.care

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